土曜日のこと
書物にかかわる仕事をしている方に案内してただき、珍しい展示を見た
蔵書票というちいさな、秘密めいた美術小紙片
お店で一冊の古書を求めた
『蔵書票の魅力』樋田直人著 丸善ライブラリー
FALLという、そのちいさなお店の入り口で
青年が陽だまりのなか珈琲を淹れていた
壁の棚にひらかれていた詩集の詩篇、タイトルはfall
書物を愛するひとは「田村隆一でしょう」と詩集の背を確かめた
詩集『新年の手紙』青土社 1973年
ずっしり重い本のほぼなかほどに「fall」は収められている
まるで言い聞かせるように頁につよく彫られたことばをわたしは指で撫でた
街は若いひとらの足音がさかんだった
春を播いているようだった